Last Updated on 2024年7月5日 by 補聴器専門店ミラックス
聞き返すことが多くなり、聞き間違いをする頻度が増えた時、そろそろ補聴器の出番かも、と考える人は多いと思います。
難聴には種類があり、治療を最優先するものもあるので聞こえにくさを感じたらまずは耳鼻科医に相談してください。
難聴の中で最も一般的な、年齢とともに低下する「加齢性難聴」は補聴器による対応が一番有効です。基本的には両耳同じように低下していることが多く、少しづつ進行していきます。
左右の耳の役割
人間に限らず哺乳類には左右に一つずつ耳がついています。これは方向や距離感を認識するためです。危険を察知しても方向や距離感が掴めなければ、どこから危険が迫ってくるかわからずパニックになってしまうので左右に必要となります。
人にとっては、左右から入ってくる音情報のおかげで方向と距離感がわかることに加えて、雑音下での言葉の聞き取りも向上します。
年齢を重ねるとともに低下した難聴(加齢性難聴)は、そのほとんどが両耳同じように聴力低下をしています。これは右耳と左耳が同じ音環境に晒され生活をしていたためで、突発性難聴のような片耳の聴力だけが突然低下する場合を除けば両耳の聴力は同程度であることが多いのです。
先述したとおり、人間は左右から入ってきた音でいろいろな情報を獲得し判断しています。ですから、両耳が同じように低下している場合は両耳に補聴器を装用した方が自然な聞こえとなります。
補聴器両耳装用のメリットとデメリット
・メリット
- 雑音下における言葉の聞き取りの向上
- 複数人での言葉の聞き取りの向上
- 音の方向感や距離感、立体感の認識
- 疲れにくい
- 聴覚の維持
・デメリット
- 価格が2台分になる
- 装用する手間が倍になる
- 装用していない側の聴覚の廃用
左右同じように低下している聴力に対しては両耳装用が基本です。両耳装用は聞こえを良くしてくれますが、片耳装用は聴覚の廃用が起こる可能性があるのでお勧めできません。もちろん費用面での問題はありますが、もともとの主訴である「聞こえにくさの改善」を目的としているのであれば両耳装用の方が問題を解決してくれます。
また、最近の補聴器は両耳連動機能が充実しているので、より聞こえ方が快適になっています。
メリットを深掘り!
雑音下における言葉の聞き取りの向上・複数人での言葉の聞き取りの向上
両耳装用をすることで、聞き取りやすさである「明瞭度」が良くなります。また、異なる音が同時に入ってきても、それぞれを分けて弁別できるようになります。
音の方向感や距離感、立体感の認識
左右に届く音の音圧差と時間差(位相差)により、聞こえてくる音を分析、処理し、方向感や距離感、立体感を認識することができます。
疲れにくい
両耳装用をすることで必要な音圧が少なく済みます。これを両耳加算効果と言い、片耳装用と比べて約3dB小さくできます。
聴覚の維持
海外の論文では、片耳に装用した場合、補聴器をつけていない方の耳の言語認識力が衰え始めるという報告があります。
さらに、片耳装用の期間が長ければ長いほど、いざ補聴器を今までしていなかった耳に付けたとしても回復が見込めないばかりか、上記の両耳装用の利点がまったく得られない可能性があるといわれています。(聴覚の廃用)
2つの大きなデメリット
デメリットとしては費用面の問題と聞こえの問題があります。
経済的な問題の解決策はいろいろあるように思うのでここでは触れません。
問題はもう一つのデメリットで、非装用耳の聞こえが悪くなる可能性があることです。どのくらいの期間で聴覚の廃用が起こっていくかはよくわかっていませんが、数か月から数年の間に起こると言われています。
これは、補聴器を装用することで十分な聞こえを得たことにより、非装用耳では聞こえる必要がなくなってしまったためであると考えられます。
さいごに
10年くらい前まで日本では片耳装用のケースが多く見られていましたが、ここ最近は両耳のメリットが認知されてきたことと、補聴器の性能が向上したことで両耳装用が当たり前になってきました。
ただし、障害者総合支援法の枠組みでは片耳分しか支給されないことが基本なので、まだ片耳装用で良しとされているケースもあります。
聞こえは、両耳でバランスよく聞きとることが一番なので、左右の聴力が同じように低下している場合はぜひ両耳装用を検討しましょう。