耳鳴りガイド|正しい知識と対処法

Last Updated on 2020年12月29日 by 補聴器専門店ミラックス

耳鳴りガイド|正しい知識と対処法

耳鳴りを知る

耳鳴り、英語で「tinnitus」(ティニタス)

外部の音とは別に耳の中で聞こえる異音のことを言います。片耳の場合もあれば、両耳の場合もあります。残念ながら現在、耳鳴りを確実になくす薬や治療法はありません。ただし、緩和する方法はあります。

世界人口の約10%~15%の人が常に耳鳴りを感じているそうです。そのうちの約20%の人が耳鳴りを「苦痛」と感じています。

日本の場合だと1200万人~1900万人くらいの方が耳鳴りを感じ、240万人~380万人が苦痛を感じている計算になります。

 私自身も静かな場所だと「キーーン」といった耳鳴りを感じることがしばしばあります。気になってくると大変で、気にしないようにすればするほど気になる厄介な症状です。耳鳴りはいつでもどこでも起こります。集中を妨げ、睡眠を妨げる。聞こえ方は人それぞれで、「キーーン」「ジーー」「シ――」「ブーーン」「カチカチ」など、音の種類も強さもいろいろです。

また、耳鳴りを感じている人の90%以上が難聴を伴っています。

耳鳴りには自覚的なものと他覚的なものがあります。

自覚的な耳鳴りは本人しか聞こえず、音源があるわけではなく、内部的なもので測定することは難しいです。耳鳴りで悩んでいる方の多くはこの自覚的な耳鳴りです。この症状には緩和する方法があります。

他覚的な耳鳴りはレアケースですが、内部に音源となる要因があり、他者が聞き取ることが可能で、一般的に治療が可能です。

原因は?

原因は何なのでしょうか。

幅広い年齢、さまざまな環境で起こる可能性がある耳鳴りですが、騒音環境に身を置く職業や高齢者はリスクが高まります。

  • 大音量の音楽、工事現場の騒音
  • 加齢
  • 投薬の副作用
  • 耳アカのつまり
  • ストレス

などなど、原因は一つではありません。

よく、ストレスが原因で耳鳴りになったという話を聞きますが、そこに科学的根拠はありません。ストレスは万病のもとですが、関連付けることが難しいのです。ただ、確実に言えることは、耳鳴りはストレスの原因なるのに十分な不快さを持っているということです。

原因は脳の誤作動?

耳鳴りの原因の中でも、難聴が関係しているものがあります。これは聴力低下と関連があると考えられており、難聴の方の多くは耳鳴りも起こっている場合が多いです。

聴力低下により脳に伝わる信号量が減少し、耳鳴りの問題が起こっている可能性があるといわれています。

通常、小さい音が入ってきた時、蝸牛と呼ばれる器官の有毛細胞は「小さい音を大きくして脳に伝える」という働きをしています。

それが難聴になると、小さい音の信号が減少することで有毛細胞の働きはほとんどなくなります。すると脳は無音状態なのに感度を上げていき、勝手に音を作り出してしまうのです。

つまり、脳は「音はあるはずだから、もっともっと増幅して聞きやすくする方が良いと判断するわけです」完全に余計なことをしてますね。最近の研究でようやく原因の一端が見えてきたのです。

耳鳴りは人によって感じ方が異なるため、正確な診断がキーとなります。まずは専門医による検査を受けて医療機関の指示に従いましょう。

※近年では耳鳴りを引き起こしている要因をある程度見つけることが可能となっています。脳をスキャンすることで、左脳の一部に通常ではない働きが認められています。これはつまり、耳鳴りが聴覚だけで起こっているものではないことを示唆しています。

病気ではなく、あくまでも症状です。

耳鳴りは個人差があり、普段の生活にどの程度影響を及ぼすのかは人それぞれです。

耳鳴りそのものは「痛み」や「かゆみ」などと同じ「症状」です。原因を治療することが必要な「病気」ではありません。それゆえに、その状態をコントロールする必要があるのです。なぜなら、その不快な症状が睡眠障害などのさまざまな「病気」の原因になることがあるからです。

耳鳴りは、うまくコントロールしていくことが克服につながります。

 

対処方法

TRT療法

2015年にはNHKのためしてガッテンでも特集されていました。そこで紹介されていた治療法の一つが補聴器を使用したものでした。これは簡単に説明すると、補聴器から音が出ていることによって人の会話や周囲の環境音に自然と集中するため、耳鳴りに意識がいかなくなるというものです。

その他にも周りが静かな就寝時にはラジオを流して意識を耳鳴りから遠ざけたり、重度の耳鳴りをお持ちの方には、「TRT療法」(Tinnitus Retraining Therapy)というものもあります。この「TRT療法」とは、補聴器から患者の耳鳴りの音に近いノイズをわざとを流して、意識を耳鳴りから遠ざけることによって、耳鳴りを気にならなくさせるというものです。

脳は経験すればするほどその経験に縛られてしまいます。

補聴器やサウンドジェネレーター(音響治療器)は、脳が耳鳴りに意識を向けている状態を、別の刺激を与えることで意識をそらす効果があります。

現在販売されているデジタル補聴器にはこの「TRT療法」の機能が搭載されているものが多いです。

ただし、この療法は専門医の指導の下に行われる必要があるため、補聴器販売店などで試すことはできません。重度の耳鳴りでなければ通常の補聴器装用で改善する可能性は十分にありますし、軽い症状の耳鳴りであれば、充分な睡眠をとることや喫煙習慣をやめる、適度な運動をするなど、生活習慣の改善を実践していくことで案外緩和されるかもしれません。

普段の会話が聞き取りにくいなどの難聴があるのであれば、補聴器も選択肢の一つではないでしょうか。

ひどい耳鳴りで悩んでいる方は専門に耳鳴り治療を行っている医療機関に頼るのも良いでしょう。インターネットで、耳鳴り外来、耳鳴り難聴外来などで検索すると最寄りの医療機関が案内されるでしょう。

 

音楽療法

耳鳴りに意識が集中してしまうと耳鳴りは助長され、ますます気になってしまいます。そこで、不快な耳鳴りに被せて音楽やラジオを聞くことによって耳鳴りを気にならなくする方法があります。意識を別に持って行って症状を軽減させます。

難聴がある場合は、低下している周波数帯域を補聴器でカバーし、音楽を聴くようにしましょう。一般的に、クラシック音楽が向いているとされています。1日3時間程度を目安に聞くようにすると良いでしょう。

最近の補聴器は、ブルートゥース搭載モデルが多くなってきているので、スマホとのダイレクトストリーミングを活用すると、いつでも好きな時に補聴器から音楽を聴くことが可能なのでとても便利です。

 

認知行動療法

認知行動療法は、自分自身の考え方や前向きな気持ちが大きな役割を果たします。耳鳴りの専門家によるさまざまな訓練を受けることで耳鳴りを克服できるようになります。ポイントは以下の通りです。

①耳鳴りについて正しく理解する:仕組みを知る、気にしないことの重要性

②耳鳴りの不安や恐怖への対処法を学ぶ:リラックスする方法、プラス思考

③聴覚の再訓練:静かな場所での工夫、補聴器や音響治療器の利用

 

克服のまとめ

  • 聞こえを確認:難聴の場合は、補聴器で低下している部分を補いましょう。
  • 聴覚の再トレーニング:周囲の音を意識して聞いてみましょう。音楽や車の音でも何でも構いません。それらの音は耳鳴りの音から意識をそらしてくれます。
  • 静寂を避けましょう:完全な静寂は耳鳴りに意識を向けてしまう恐れがあります。音楽やラジオなどBGMとして流しておくと良いでしょう。
  • リラックスの方法:耳鳴りは緊張の原因となるのでリラックス方法を身につけましょう。
  • 前向きになろう:ご家族やご友人との生活を楽しみましょう。スポーツなども有効です。耳鳴りに生活を支配されないようにすることがポイントです。
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