Last Updated on 2023年2月25日 by 補聴器専門店ミラックス
補聴器は会話を聞き取りやすくしてくれるとても便利なアイテムですが、残念ながら万能ではありません。使用する環境によっては十分な効果を得られないこともあります。
基礎から学ぶ
基礎なので飛ばしても問題ありませんが、より理解が深まると思いますので参考にしてみてください。
音は空気の振動
「音は小さな圧力変動」で、その小さな変動が空気中を伝わっていき、人の鼓膜を振動させ、人は音として感じることができるわけです。
では、その小さな変動とはどのくらいなのでしょうか。
1気圧=1013hPa(ヘクトパスカル)=101300Pa(パスカル)です。人が聞くことができる最小の大きさは0dB(デシベル)で、それをPaに置き換えると「0.00002Pa」となります。ちなみに騒音レベルが94dB程度でもたったの「1Pa」です。いかに小さな圧力変動であるかわかると思います。
音の高低と大小
1秒間に振動する回数を音の周波数といいます。振動の回数が多ければ高い音、少なければ低い音として聞こえます。
音の大きさは振動の大きさです。大きな圧力変動なら大きな音、小さな圧力変動なら小さな音に聞こえます。
音と距離
1秒間に音波が伝わる距離を音速といいます。空気中の音速は常温(15℃)でおよそ340m/sです。
音の周波数と波長の関係
1000Hz・・・1波長は約34cm
100Hz・・・1波長は約3.4m
10Hz・・・1波長は約34m
1Hz・・・1波長は約340m
上記のように周波数によって音の波長は異なり、低い周波数ほどある程度の大きさが必要になってきます。
音の伝わり方
音の大きさは音源から離れるにつれて減衰していきます。
点音源の場合は、距離が2倍になるごとに-6dB、距離が10倍になる毎に-20dBの割合で減衰していきます。
線音源の場合は、距離が2倍になるごとに-3dB、距離が10倍になる毎に-10dBの割合で減衰していきます。
その他にも音が減衰する要因は、空気吸収、地表面吸収、壁などによる遮蔽、気象などがあります。
離れると聞き取りにくくなる理由は距離だけではない
音源から離れるほど音が小さくなることは分かっていただけたと思います。しかし、聞き取りにくくなる問題は距離だけではありません。それは、日常生活ではさまざまな雑音が発生しているということです。
話し手から離れるにつれて、聞き手との間に雑音が多く入り込んできます。下手をすると雑音の方が大きく聞こえる場合もあるかもしれません。
減衰している音に雑音が被せられてしまうことで音声が聞き取りにくくなっているわけです。
補聴器の機能
補聴器の進化は雑音抑制機能の進化でもあります。音声を聞き取りやすくするために、邪魔な雑音をさまざまな方法で抑制します。
ただ、世の中は音情報であふれています。厄介なことに音は360°全方向から耳に届き、それが常に変化しています。
視覚の場合、視界に入っているものが全てで、もし見たくなければ眼を閉じれば良いですが、聴覚の場合はそうはいきません。音の強さや高低によっては遠くの音も近くの音も遠慮なく耳に届きます。
人間の耳は周囲の音を常に受け入れます。手などで物理的に塞がない限り音は聞こえてくるのです。
距離と雑音
補聴器の効果が一番発揮される距離というのは、おおよそ1m〜1.5mほどといわれています。もちろん周囲の雑音環境によって異なってくるので一概には言えませんが、人と会話する距離がそのくらいの距離が多いことも関係しているかもしれません。
しかし、いつも近距離で会話をするわけではありませんし、周りが静かな状態であるとも限りません。そんな時は少し聞きにくさを感じることがあると思います。
難聴の方や補聴器ユーザーは、健聴者に比べ、距離が延びるほど会話が聞き取りにくくなるので、不満や不便を感じている人も多いと思います。
補聴器にはさまざまな機能が搭載されていますが、そのほとんどは雑音の抑制機能となっています。その雑音抑制機能が優れているほど聞き取りやすく、値段も良くなっていきます。
距離の変化に対してはノンリニア増幅が一定の役割を果たしていますが、聞き取りやすさは周囲の雑音環境に左右されてしまいます。
機能面でしいて挙げるとすれば、マイク指向性ということになりますが、この機能は聞き取る範囲を狭くすることで雑音を軽減させる機能であり、全ての機種に搭載されているわけではありませんし、ほとんどの場合は両耳使用時に限られます。
このように、距離と雑音というのはとても厄介な問題で、補聴器単体での解決策はさまざまな雑音抑制機能を組み合わせて対処しているのが現状です。
そして、その機能が搭載されているほど補聴器の価格は高くなりがちなので、デメリットといえるかもしれません。
解決策
距離の不利や騒音下での会話を補うための補聴器単体での根本的な解決策はありませんが、補聴器にアイテムをプラスすることで不利をなくすことは可能です。
それは、簡単に言えば補聴器のトランシーバー化です。
送信機(マイク)と受信機(補聴器)を用意することで距離の不利や騒音下での会話がスムーズに行えるようになります。
【補聴援助システム・ロジャー】
フォナック補聴器から発売されている補聴援助システム「ロジャー」は距離の不利をなくしてくれます。
ロジャーを使用すると、補聴器が受信機となり、送信機であるロジャーマイクからの音声を直接補聴器から聞くことができます。話し手のそばにロジャーマイクを配置するか、話し手に装着してもらうことで効果を発揮します。
フォナック補聴器の最新機種では、補聴器本体に受信機が内蔵されている機種がほとんどなので別途受信機を購入、装着する必要がなく、送信機である「ロジャー」を購入するだけで済みます。
当店会員様では、仕事で使用されている方がほとんどです。
フォナックロジャーについてもっと詳しく知りたい方は、ミラックスのロジャー紹介ページまたは、メーカー専用ページをご覧ください。