【補聴器】聞くことを再経験する

Last Updated on 2020年12月30日 by 補聴器専門店ミラックス

【補聴器】聞くことを再経験する

聞こえを助けるアイテム「補聴器」

 人が聞くことができる音の範囲というのは、20Hz~20,000Hzで、他の哺乳類と比べてみると特別広いわけではない。犬は40Hz~40,000Hz、猫は40Hz~60,000Hz、イルカは200Hz~100,000Hzを聞くことが可能だ。

 人が、聞くことができる範囲の中でも、一番重要な音域が、会話の音域である200Hz~6,000Hzとなっています。母音は低音域に集中しており子音は中音域から高音域に配置されています。ちなみに、20代では聞くことができるのに年齢を重ねると聞こえなくなるモスキート音は17,000Hzです。

 健康診断などで測定するのは、1,000Hzと4,000Hzが主流ですが、耳鼻科や補聴器専門店で測定する範囲はもっと細かく、125Hz、250Hz、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、3,000Hz、4,000Hz、6,000Hz、8,000Hzとなっており、その範囲に会話の音域がすべて含まれています。ですから補聴器は、人間にとって一番重要な音域を増幅するアイテムであると言えます。

年齢別平均聴力図

音色を聞き分ける豊かさ

 人間の聴覚は、聞こえる範囲こそ狭いですが、音の高低や強弱を聞き分ける能力に優れています。これは、生まれてすぐに身についているわけではなく、さまざまな音を聞いた経験から脳が判断をしています。

 オーケストラの指揮者やピアノの調律師は、音色を聞き分ける能力にとても優れていますが、これも、天性のものというわけではなく、訓練の賜物です。他人よりも沢山の音情報を聞くことで積まれた経験をもとに、脳がどう処理をするかで、その人のプロとしてのレベルが決まるのです。そして、観客側は演奏に感動するのです。

 少し話はそれますが、私の好きな番組でダウンタウン浜ちゃんの「芸能人格付けチェック」という番組がありますが、あれこそ、経験してないことには判断しようがないので、普段から高級な食材や一流音楽家の演奏を聞いていないとわかりようがないのです。

小鳥のさえずり

聞き取りにくいのはデータ不足が原因

 健聴の状態は、いろいろな音を耳が分析して送ったデータを脳が処理し、雑音はできるだけ無視して、聞き取りたい音に意識を向けさせます。一方の難聴の状態は、耳で分析しているデータの情報量が少ないため、少ないデータの中でしか処理をすることができません。その結果、聞き間違いが起こったり、内容が理解できなかったりするわけです。

最終的には脳が判断

 人間の耳の形は、進化の過程で現在の形となっているわけですが、聞こえ方の最終的な判断は脳が行っています。前後の音の方向感というのは、今の耳の形で聞き取った経験によって脳が音源の方向の判断をしています。

したがって、耳の穴は塞がずに、耳のくぼみだけを粘土で埋めると、今までの反響パターンと違う音の入り方をするので、方向感が狂ってきます。前から出ている音にもかかわらず、後ろから聞こえてきたり、そのまた逆のパターンで聞こえるケースもあります。これは、今までの聞こえの経験がゼロになったことによる脳の判断ミスです。

 しかし、耳のくぼみを粘土で埋めた状態で生活を続けていくと、少しづつ脳が修正していき、音源の位置を正確に判断できるようになってきます。つまり、経験を積んで正しい方向感を獲得していくのです。

会話の場合は、難聴で曖昧な情報しか脳に伝わっていないと、脳は手掛かりが少ない中で会話の内容を推測、判断しなければならないので、内容を間違えてしまうことが出てくるのです。正確な情報を脳に伝えてあげればそれだけの脳は判断がしやすくなります。

 

補聴器と聴覚訓練

 補聴器がうるさくて使えない、合わないといった原因は、難聴で情報量が少ないところに多くの情報をいきなり与えてしまうところにあります。経験不足のために脳の処理が追い付かなくてパンクしてしまっている状態なのです。ですから、はじめての補聴器は、音は控えめに調整をして、少しづつ必要な音まで上げて行くことが、聞こえの改善につながるのです。

 補聴器による聴覚訓練とは、脳にいろいろな音情報を伝えて判断材料を揃えてあげることです。さまざまな判断材料があることによってはじめて、雑音か必要な音かを取捨選択することができるのです。

 価格の高い補聴器は、雑音の選択肢をあらかじめ少なくして、音声の優先順位を上げてくれます。いずれにせよ、補聴器で常に正確な音情報を脳に伝えて「聞こえている経験を積むこと」が聞こえの改善につながっていくのです。

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