【家族の対応】さほど不自由を感じていない難聴者

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難聴の自覚

 難聴によって聞こえにくく、日常生活に不便を感じている人がいる一方で、同じくらいの聴力レベルであっても不便、不自由さを感じていない難聴者もいます。

 

後者は、補聴器を持っていない、補聴器は持っているが使用していない、もしくは、自分が補聴器を必要とするような難聴ではない、と考えています。

 

実際には難聴であり、周囲の人間からすると補聴器の必要性を感じています。しかし、当の本人は何かしらの理由を付けて補聴器を装用しないという選択をします。

 

家族からすると、大きな声を出し、繰り返し伝える必要があったり、テレビの音量が大きくてうるさかったりと、ストレスに感じることが多いので、できるだけ補聴器をしてもらいたいと考えています。

 

難聴者が補聴器を装用しない理由はいくつか考えられます。

  • 必要性を感じていない
  • 音の不快感
  • 見た目の問題
  • 装用の違和感
  • 費用の問題
  • 周囲の否定的な意見
  • 集音器と混同している

 

そもそも必要ない?

 補聴器の必要性を感じていない人の場合、装用を前向きに捉えることは難しいことが多いです。本人にとっては、「聞こえている」という認識なので、聞こえていない音は、そもそも認識できていないため、その音の存在自体がないものとして処理されています。

 

 また、会話は出来ているので必要ないと考えているケースも多いですが、ほとんどの場合、家族や友人など会話相手が繰り返し伝えているおかげで成り立っていることも多々あります。

 

 

 テレビであれば、聞こえやすくなるまでリモコンで音量を上げていけば良いですが、会話相手の声量をコントロールするリモコンがあるわけではないので、会話相手は、「えっ?」と難聴者に聞き返されるたびに、会話の内容が伝わるように声量や言い方を変えて再度同じ内容を話す羽目になります。

 

あれば便利だけど、相手の声を大きくしてくれるリモコンはない!

 

答え合わせは難しい

 最終的に内容が伝われば目的は達成されていますので、それで良しとすることもできます。

しかし、問題は、相手の労力もさることながら、会話の内容が正確なのかを確認する術が難聴者本人にはあまりないということです。

その都度、会話の内容を復唱して確認するのは時間も労力も必要になるので、あまり現実的とは言えません。

 

 結果として聞き間違いがそのままの誤った認識となり、意思疎通のズレが起こります。

繰り返しですが、難聴者本人は、聞き間違えているという認識はないため「聞こえている」となりやすいのです。

 

会話の例

 

 ここで、補聴器専門店でのスタッフとお客様との会話を例に出してみましょう。

 

スタッフ:いらっしゃいませ、まず初めにいくつかお話を聞かせてください。

 

お客様:はい

 

スタッフ:普段、会話などで不便を感じていることはありますか?

 

お客様:いや、特にないです

 

スタッフ:・・・

 

お客様:買い物って言ってもレジで買うだけだから別に不便などないです

 

スタッフ:確かに、そうですよね

 

 このようなやり取りは、特別珍しい事ではありません。「会話」と「買い物」を聞き間違えているわけですが、お客様から「買い物」という言葉が出てこなければ、話しの方向は変わっていた可能性が高いです。

 

このケースでは再度言い方を変えて質問をしています。

 

スタッフ:それでは、奥様との会話で不便を感じていることはありますか?

 

お客様:聞こえているけど、何を言っているのかわからない時がある。声が小さいのか、聞き取りにくい。買い物とかは特に問題ではない

 

スタッフ:なるほど、わかりました。ありがとうございます

 

 会話は推測しながら進んでいきます。推測できるキーワードが多ければより正確に推測できますし、キーワードが少なければ、今までの経験から推測をして会話を行っていきます。

 

難聴の状態だとそのキーワード自体が曖昧になってしまうため、聞き間違いが起こりやすくなり、会話の内容がズレたまま進行しやすくなります。

これは双方にとってストレスが溜まる原因となるでしょう。

 

さいごに

 補聴器装用は、難聴者本人の装用意思が重要です。必要を感じていないのに装用を強要するのは得策ではありません。しかし、だからといってそのままにするのも心配です。

 

 もし、ご家族が補聴器の必要性を感じたら、聞き間違いをその場で否定、修正するのではなく、一拍置いてから聞き間違った言葉を教えてあげましょう。それも会話の一部だと捉えればストレスも少なく済みますし、何より、その積み重ねによって難聴者が補聴器の必要性を感じるきっかけになるかと思います。

 誰も間違えようとして間違えているわけではないので、決して、頭ごなしに否定したり、間違いを指摘しないようにすると良いでしょう。

 

 ちなみに、2018年の調査報告(JAPAN Trak 2018)では、難聴を自覚してから補聴器を購入するまでの期間は平均4〜6年となっています。難聴を自覚してすぐに補聴器を購入する人の方が少ないのが現状なので、ゆっくりと提案していくのも一つの手かもしれません。

 

補聴器の相談は「認定補聴器専門店」などで専門家に相談することをおすすめします。

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