何度も調整しているのに補聴器の聞こえがうまく合わない
補聴器には調整が必要不可欠ですが、初期設定時点での誤差がその後の調整を難しくしているケースが多くあります。
初期設定に必要な項目が正しく設定されていないと誤差が生じ、重なると誤差は大きくなります。
実際によくある設定ミスに、骨導値の未入力や耳栓の選択ミスがあります。これらは気を付ければ済むことですが、意外と多いです。
当たり前ですが、スタート地点での誤差が少ない方が調整にかかる時間も少なくなります。
大事な初期設定
ユーザーが補聴器を使用するためには、事前に必要な情報をパソコンに入力して補聴器の初期設定(ファーストフィット)を実施します。
初期設定(ファーストフィット)に必要な情報
- 機種(耳あな型、耳掛け型)
- 耳栓の種類
- 聴力データ
- 裸耳利得
- 補聴器経験値
パソコンのフィッティングソフトに上記のデータを入力し、計算式(処方式)をもとに必要な音(利得)を補聴器に設定します。
◇補聴器の種類や耳栓の選択
同じ聴力データだとしても、選択した機種または耳栓によって鼓膜に伝わる音は異なります。特に既製耳栓を使用する場合は効果に差が出てきます。
◇聴力データ(オージオグラム)
聴力測定によって周波数ごとに聞こえはじめ(閾値)を測定し、記録していきます。
人によって聞こえにくい周波数帯、程度は異なります。
一般的に、平均聴力が40dB以上になると聞こえに不便を感じる場面が多くなり、難聴を自覚し始めます。
気導値と骨導値があり、両方の値を入力することで、より正確に補聴器の初期設定を行うことができます。
◇裸耳利得
ユーザーの外耳道共鳴を測定します。外耳道共鳴は、外耳道(耳の穴の入り口から鼓膜まで)の容積、形、長さで共鳴度合いが異なるため個人差が大きい。測定には、実耳測定/REMが必要です。
◇補聴器の使用経験
はじめて補聴器を使用する人は、音に対して敏感でうるさく感じることがあります。一方で、経験者は必要な音量でうるさく感じることは少ないため初期設定での音量が異なってきます。
パソコンでの初期設定のやり方
補聴器をパソコンにつなげフィッティングソフトで必要な利得を算出します。その際に必要な入力データが、「機種」「耳栓」「聴力」「裸耳利得」「経験値」の値となります。
それぞれの項目が正しく選択、入力されていると初期設定での誤差は少なくなります。
上記の中でもっとも誤差が出てしまうのが「裸耳利得」です。これは実耳測定を行わないと得ることができません。
測定設備がない場合は、裸耳利得の平均値を採用し補聴器の初期設定を行います。
日本では、実耳測定導入の医療機関や専門店は少ないため、多くは平均値で設定されていると思います。
裸耳利得は個人差が大きいため平均値を基準とするよりもユーザーの裸耳利得を基準にして初期設定をした方が誤差は少なくなります。ユーザーの聴力に対してバランスよく設定されるため、初期設定後の調整回数が少なくて済む傾向にあるのも大きなメリットです。
測定誤差の修正が調整
補聴器の音を設定する際に、計算式を用いて算出するのですが、その基準になるのが「裸耳利得」となります。よって、平均値を基準にしている時点で誤差は必ずと言ってよいほど生じてしまいます。
この誤差をいろいろな効果測定を行い、問題点を見つけ出し修正することが補聴器における調整と言ってもよいでしょう。
つまり、補聴器の調整がうまくいかない原因は、一番初めの設定に問題があるからといってよいと思います。逆を言えば、それぞれの項目を正しく設定していれば調整にかかる時間や労力はグッと減ると言えます。