聞こえにくいのにうるさい?
難聴者に内容が伝わるようにと耳元で大きな声で話しかけ、逆にうるさがられるといった何ともやり場のない気持ちになった方は少なからずいるのではないでしょうか。
普通の声量だと聞き返しが多かったり、聞こえていなかったりといろいろ不便なので、こちらとしては親切心を持って大きな声で話しかけているのに、「うるさい」と言われると多少はガックリ来ます。これは難聴の状態でも、補聴器を使用している状態でも同じように起こりえます。
この現象は、「ダイナミックレンジ」が関係しています。
ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジとは、最小可聴閾値から不快閾値(UCL)のことを言います。
つまり、ようやく聞こえる小さな音からうるさくて聞いていられない大きな音までの範囲のことです。日本語で言えば「可聴範囲」となります。
人の聴覚のダイナミックレンジは「0dB~120dB」で、健聴者のダイナミックレンジは「小さい音~95dBもしくは100dB」くらいと言われています。そして、普通の会話音はこのダイナミックレンジ内に入っていて、快適レベル(MCL)はほぼ中央となっています。
一方の難聴者(中等度感音難聴の場合)は「小さい音」(最小可聴閾値)が40dB以上で不快閾値は健聴者と同じか少し下がるので「40dB~95dBもしくは100dB」となり、健聴者と比べてその範囲は狭くなります。
これは難聴のレベルが上がればそれだけ範囲が狭くなるということです。そして、快適レベルもその分だけ上がります。
つまり、快適レベルと不快閾値がとても近くなるということなのです。良く聞こえる音量と不快に感じる音量の差があまりなくなってしまうために、閾値以上で健聴者より音が急に大きくなるように感じてしまうのです。これを、「補充現象」といいます。
ただし、内耳性感音難聴以外は補充現象は起こりません。
伝音難聴の場合は異なってきますので、ここでは、加齢性難聴などの内耳性感音難聴についてのお話だと理解してください。
上記はあくまで音の大きさについてということですが、ご存じの通り、難聴にはいろいろな聴力パターンがあり、低下している周波数帯やその度合いは人それぞれです。
なので、一律に音を大きくすれば聞こえやすくなるわけではなく、低下している周波数ごとの調整が必要になってきます。
補聴器の調整がポイント!
補聴器は周波数ごとに調整を行うため、適切であればうるさく感じることはほとんどありません。そして、最新のデジタル補聴器は「ノンリニア増幅」なので、入力された音の大きさによって利得(増幅度合い)を変えてくれます。
ノンリニア増幅は、小さな入力音では利得を大きくし、大きな入力音では利得を下げるということを補聴器が自動的に行います。さらにここに出力制限機能も加わるので補聴器ユーザーは不快な思いをせず、そのご家族も普通の声量で話しかけることが可能になるのです。
技能者にご相談ください
注意点としては、このような調整は認定補聴器技能者など専門家に頼った方が良いという点です。ダイナミックレンジを意識した調整が快適性につながりますので、補聴器の調整はぜひ認定補聴器技能者にご相談くださいませ。