Last Updated on 2021年2月16日 by 補聴器専門店ミラックス
有名補聴器メーカーとその他メーカーの違いとは?
コロナによって人々の生活様式が変わり、聞こえに問題を抱えている人たちは少なからず不便を感じていると思います。人との距離は遠くなり、口元はマスクで覆われ、口の動きが分かりづらく、聞き取りが今まで以上に悪くなっています。だからと言って相手が普段よりも大きな声で話すかと言えば、そんなことはなく、聞き取りにくい場合は、その都度聞き返すか、なんとなくやり過ごすかではないでしょうか。
そんな中、お客様から新聞の切り抜きをいただいた。記事の内容は、「補聴器 コロナで需要」マスク日常化「聞こえにくい」というのもで、パナソニック、ONKYO、シャープなどの家電メーカーやオーディオ機器メーカーが補聴器の開発に注力している。といった内容でした。
以前から、国内メーカーと海外メーカーの違いについてよく質問をいただいていたので、この機会に補聴器を専門に製造しているメーカーの強味と、なぜ日本の補聴器メーカーが世界で存在感がないのかを解説していきたいと思います。
はじめに結論を言ってしまえば「資金力と開発力の差」ということに尽きると思います。どんな製品もそうですが、支持され売れるのはそれが良い製品だからです。
補聴器業界の現状
世界6大ブランド
まず、世界シェアの90%以上を占めている、6大ブランドというのもがあります。「フォナック」「シグニア」「GNリサウンド」「ワイデックス」「スターキー」「オーティコン」これらのブランドは、補聴器専門店なら最低でも1社は、間違いなく取扱いがあるはずです。各社ともに歴史は古く、50年以上にわたり補聴器の開発と製造を行ってきました。中には100年以上の歴史がある会社もあります。
国内メーカー
国内では、「リオン」が有名で、1948年に国内初の量産補聴器を発表しています。その他にも「マキチエ」や「コルチトーン」などの補聴器メーカーがあります。
技術革新
デジタル化
補聴器が一般に普及し始めたころは、「アナログ式補聴器」というもので現在の「デジタル式補聴器」とは異なるものでした。
アナログ式の時代は約50年以上続きましたが、デジタル補聴器が1990年代後半に登場し、2000年代後半には、革新的なハウリング抑制技術が発表され現在に至ります。
RICタイプの登場
小型の耳掛け型であるRIC(Receiver-In-Canal)タイプが登場し、それまで不可能であったオープンフィッティングが可能となり、爆発的に販売数を伸ばすこととなりました。これは、耳栓に穴が開いており、今までにない快適な装用感を実現したもので、従来の圧迫感が軽減されたため、それまで補聴器を敬遠していたユーザーにも支持されました。
このあたりから、国内メーカーと海外メーカーの技術的な差が大きくなり始めてきます。当時革新的であったオープンフィッティングは、高度なハウリング抑制機能が求められるため、豊富な資金と開発力が必要でした。その結果、当時、一部の国内補聴器メーカーは、6大メーカーから主要部品の供給を受け、デジタル補聴器を販売することとなります。つまり、核となるマイクロチップの開発に問題があったのです。現在では自社開発のマイクロチップを搭載しているメーカーが多いですが、当時はそういった事情があったのです。その何十年の差が世界シェアとして表れているのです。
ハウリング抑制
ハウリングとは、フィードバック現象と言われる「ピーピー音」のことです。補聴器から漏れた音を補聴器のマイクが繰り返し拾い、増幅することによって生じるハウリングは、聞こえを阻害するだけではなく、自分以外の人にも聞こえるとても厄介なものです。
補聴器はマイクで周囲の音を拾い、聴力レベルに合わせて出力するわけですが、音環境というのは絶えず変化しており、そのたびに信号の処理を行う必要があります。また、同時に装用者の動きによって、耳穴と耳栓に隙間が生じたりもするため、とても複雑で高度な処理が必要になってくるのです。
そこで登場したのが「ハウリング抑制機能」です。現在主流な方式は「逆位相方式」と呼ばれるもので、ハウリングリスクのある信号に、反対の信号を重ねることによって消音する技術です。
補聴器は、音を拾うマイクと音を出すレシーバー(スピーカー)の距離が近いので、大きな音を出そうとすればそれだけハウリングのリスクが高まります。従来のハウリング抑制は、物理的な対策がされていました。つまり、音漏れを少なくするために耳の穴を出来るだけ塞ぐといった対策でした。この対策の欠点は、強い圧迫感と自分の声の響き、こもり感でした。高度や重度難聴者にはそれらの欠点をカバーできるだけの聞こえのメリットがありますが、軽度・中等度難聴者にはデメリットに感じることの方が多いのです。ましてや、こもり感の原因の一つである低域の聴力が充分に残っている場合はなおさらです。
ハウリング抑制技術はメーカーによって差がある
デジタル処理が可能になってからは、各社ともハウリング抑制機能の向上に努めており、パターンデータの積み重ねによって独自のアルゴリズムを開発しています。したがってノウハウが蓄積されているメーカーほどハウリング抑制の精度が高くなります。精度の高さとは、単にハウリングがしないというだけではありません。聞き取りたい音声はしっかり増幅し、なおかつ、ハウリングリスクのある信号を効果的に抑えることが良い聞こえとなります。世界シェアトップ6の補聴器でもハウリング抑制の精度は異なるのです。
ハウリングのまとめ
- ハウリングは補聴器から出た音が漏れ、その音を補聴器が繰り返し増幅してしまう現象
- ハウリングを止める簡単な方法は、耳の穴を完全にふさぐこと
- しかし、耳の穴を塞ぐと強い圧迫感と響きやこもり感がでるため常時装用するには向き不向きがある
- 最新の補聴器は快適性と聞こえの改善を実現するために、精度の高いハウリング抑制機能が搭載されている
- 逆位相パターンはノウハウの蓄積である
さいごに
一日の長ならぬ50年の長です。ハウリング抑制機能のほかにも補聴器には様々な聞こえの改善と快適性を追求した機能が搭載されています。これから先、さらなる技術革新で、国内メーカーや家電、オーディオ機器メーカーが台頭してくる可能性も十分にあります。しかし、今のところは世界シェアトップ6ブランドに軍配は上がると言ってよいでしょう。いろいろな企業が補聴器の開発に注力することは、ユーザーにとってはとても良いことなので今後に期待したいところです。