【デジタル補聴器】補聴器メーカーの音の違い【計算式編】

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Last Updated on 2020年12月23日 by 補聴器専門店ミラックス

【デジタル補聴器】補聴器メーカーの音の違い【計算式編】

 年齢とともに聴力が低下してきて補聴器をする場合、そのほとんどが「感音難聴」です。そして皆さんがいざ、補聴器の購入を検討されたときに悩まれるのが、一体どこのメーカーが良いのかということだと思います。

補聴器で「良い」とされるのは、会話が良く聞き取れることですが、各メーカー良い聞き取りを実現するために、さまざまな機能を開発し搭載しています。正直に申し上げると、補聴器のメーカー選びはアイテムの性質上、非常に説明が難しいです。

世界6大ブランドで限った話であれば、性能や機能にそれほど大きな差はありません。(もちろん各メーカーごとに得意な分野はあります)

ご存じかもしれませんが、補聴器は聴力レベルや生活環境をヒアリングしながら調整していくので、調整次第で良くも悪くもなるのです。

ただし、調整のスタートラインまで話を戻すと事情は変わってきます。

同じ聴力パターンで各メーカーの補聴器を調整した時、はじめに設定する音はメーカーによって違います。そして、そのはじめの音を決めるのがフィッティングルールと呼ばれる計算式です。

メーカーによって呼び名はさまざまですが、世界中で広く知られている計算式でDSLやNAL-1、NAL-2などがあります。今回はこのフィッティングルールについてわかりやすく解説していきます。

たくさんあるフィッティングルール

本来であれば一つのフィッティングルールを採用すれば良いはずですが、現状ではそうはなっておらず、NAL-1などのフィッティングルールのほかに、メーカーごとに独自の計算式を採用しているのが現状です。

つまり、計算式が確立されていないのです。ただ、そうは言っても基本的な計算式の根底にある考え方は同じなので、言うなれば、メーカーごとに「味付けが違う」といったところです。

補聴器のデジタル化によってフィッティングルールを容易に変更できるようになり、NAL-1やメーカーオリジナル計算式など、フィッターはいろいろ試せるようになりました。一つの聴力パターンに対してたくさんのアプローチ方法があるのはユーザーにとっても有益です。

一方で、メーカーによって違う「フィッティングルール」はしばしば混乱の元にもなります。選択肢がいくつもあるということは、経験が少ないフィッターと経験豊富なフィッターとでは調整に差が出てくるということでもあります。

テクノロジーの進歩スピードはとても速いので、他社が持っていない調味料、つまり革新的な技術やアルゴリズムが開発されて、経験の差もなくなる日が来るかもしれませんが、今はまだ難しいのが現状です。

 

実際に聞き比べると、同じ聴力で設定しているのに聞こえ方が違うことが確認できるはずです。

6大ブランドすべてを聞き比べるのも良いですが、各メーカーの特徴を知っている専門家に相談するのが手っ取り早いでしょう。

 

さて、この計算式ですが、なぜ決まった計算式に統一しないのでしょうか、もしくは出来ないのでしょうか。この問題を説明するには、メガネと目の関係と補聴器と耳の関係を見ていくとわかりやすいです。

メガネと補聴器の違い

メガネを引き合いに出して補聴器の説明をする場合、ユーザーにとってはメガネは身近なものなので受け入れやすいと思いますが、もし、あなたがそういった説明を受けたとしたら注意が必要です。なぜなら、その説明は間違っている可能性が高いからです。

 

メガネは目の屈折異常を補正するためのアイテムです。

近視や乱視、遠視などの種類があり、レンズによって光の焦点を網膜上に結び、網膜が光を電気信号に変換し脳に伝えて、人は「見る」ことができます。この一連の流れは近視、乱視、遠視すべて同じです。

補聴器は聴力の低下を補助するためのアイテムです。種類としては伝音、感音、混合の3種類があります。この伝音と感音は、同じ聴力低下でも、耳の中の違う部分にそれぞれ問題があります。

伝音難聴は外耳道から中耳にかけて問題がある場合で、音を単純に大きくして内耳に伝え、有毛細胞が電気信号に変換し脳に伝えて、人は「聞く」ことができるようになります。

この伝音難聴に対しての補聴器の働きは目とメガネの関係とよく似ています。

一方、感音難聴は内耳に問題がある場合で、多くは有毛細胞に問題があります。

つまり、音を電気信号に変換するところに問題があるのです。目でいうと網膜と同じ役目のところに問題があることになります。目の場合、基本的に網膜に問題があると(たとえば黄斑変性症など)メガネではその部分を補正することはできません。

では、補聴器はどうかというと、有毛細胞の働きを代替できる部分が多くあります。テクノロジーの進歩のおかげで、有毛細胞の働きに似た働きを補助することが可能になりました。

つまり、伝音難聴に対しての補聴器の働きは単に音を大きくすることであり、感音難聴に対しての補聴器の働きは、損傷した有毛細胞の代わりに働くことなのです。

【有毛細胞の働きについて詳しくはこちらの記事を・・・入門、難聴について】

年齢を重ねることによって徐々に低下してきた難聴を加齢性難聴と言い、これはほとんどの場合「感音難聴」なのです。

そして、たくさん存在するフィッティングルールは主にこの「感音難聴」に対して研究されているのです。もし、あなたの難聴が伝音難聴であれば、まずは治療が可能な場合が多いです。治療後に補聴器が必要であれば、メガネと同じように補聴器を装用すれば聞き取りもスムーズに改善する可能性が高いです。

しかし、感音難聴の場合はもう少し複雑になるので改善までには時間がかかることがほとんどなのです。

その複雑さゆえに世界中の研究者たちがより良いフィッティングルールを日々開発しているのです。

まとめ

  • 世界6大ブランドであれば性能や機能に大きな差はない※ただし、得意分野はある。
  • メーカーごとに音を設定するフィッティングルール(計算式)が違う
  • 経験豊富なフィッターの方が個人に合わせた計算式を提案できる
  • フィッティングルールが違うと聞こえ方が違う
  • 伝音難聴と感音難聴では問題がある箇所が違うため音の設定が違う
  • 加齢性難聴は感音難聴であることが多い
  • 多く研究されているのは感音難聴に対してのフィッティングルールである
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