普段の会話が聞き取りにくくなり、生活に少しずつ支障をきたしてきた時、このまま聞こえにくい状態を放っておいて良いのか、何か対策はあるのか悩むところだと思います。
「治療」というと、思い浮かべるのは、薬の服用、手術、鍼灸、漢方薬、セラピーなどで抱えている症状が和らいだり、無くなることを差します。
では、難聴は治るのでしょうか。
その答えはケースバイケースです。
つまり、治療が可能な難聴と、治療が不可能な難聴があるのです。
難聴とは、音が聞こえにくい状態のことですが、健聴者が難聴を体験するには、耳を耳栓や指などで塞いでしまえば疑似体験できます。
難聴をイメージするには良い方法だと思います。しかし、疑似体験が難しい種類の難聴もあります。それは、言葉の誤認識、聞き間違いによる聞こえの問題です。
「かとうさん」を「さとうさん」と聞き間違えたり、「7時」を「1時」に聞き間違えたり、音は聞こえているのに意味がまるで違う。これがもう一つの難聴です。
この言葉の聞き取り能力のことを「語音弁別能」といいますが、言葉の聞き間違いは個人差があり、その正解率が低いと会話自体が非常に困難になります。この問題は、耳の蝸牛と言われる器官の中にある有毛細胞の損傷によって引き起こされます。ダメージを受けた有毛細胞は元に戻ることはありませんので、弁別能が落ちてしまうと非常に厄介です。
難聴の種類
難聴には伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴の3つがあります。
治療が可能なのは、主に伝音性難聴で、中耳炎、真珠腫性中耳炎、滲出性中耳炎、鼓膜穿孔、耳垢栓塞などがあり、これら外耳道から中耳にかけて問題がある場合は治療や手術が必要で、治る可能性があります。
ちなみに、耳の穴を耳栓などで塞いだ状態が、伝音性難聴の聞こえ方です。
一方で、加齢性難聴(老人性難聴)や騒音性難聴、突発性難聴などの感音性難聴は、有毛細胞の損傷が原因なので残念ながら今のところ治療の方法はなく補聴器の装用が必要になってきます。
ただし、突然聴力が低下する突発性難聴の場合は、発症後、医療機関によるできるだけ早い処置が必要となります。また、重度感音性難聴等の場合は人工内耳を検討しても良いでしょう。
混合性難聴は伝音性と感音性を併せ持った難聴で、症状に応じた治療、補聴器の装用が必要です。
難聴の予防
年齢を重ねるとともに体の機能は衰えていきます。どんなに優秀なアスリートもいずれは後進に道を譲る時が来るものです。残念ながら聴力も例外ではありません。
一般的に人の聴力は20代くらいまでは20Hz~20000Hzほどの可聴域がありますが、加齢によってその可聴域は徐々に縮小されていきます。特に高い周波数から聞こえにくくなる傾向にあります。長く現役を続けるベテランアスリートがいるように、日々のケアによってパフォーマンスレベルを維持することは可能です。
それは難聴も同じです。
加齢性難聴や騒音性難聴などの感音性難聴は、内耳の蝸牛に問題が生じるために起こります。
イヤホン装着時、必要以上に大きな音を出して音楽を聴かないようにしたり、工場など騒音下で仕事をするときは耳栓をするなど、耳にやさしい生活を送ることが予防につながります。
そして、難聴になってしまった場合も出来るだけ早く補聴器を装用して、聴力(弁別能)の維持を心がけることが生活を豊かにしてくれます。また、早めの難聴対策は認知症の予防にも効果があるとされています。