「聞く」
高齢になるにつれて加齢性難聴のリスクが高まります。
高音域から聴力の低下が始まり低域に進行していきます。平均聴力が40dBくらいの中等度難聴になってくると聞こえにくさを自覚しやすくなります。
加齢性難聴に代表される感音難聴は、補聴器による対処が一般的で、多くの人が補聴器の使用によって聞こえの不自由さを解消しています。
はじめての補聴器装用は調整に時間を要しますが、それは主に聴覚の慣れの問題です。補聴器の目標利得(ユーザーに必要な音)は、実耳測定を行えば正確に算出できるので、微調整こそあれ、あとは音量感の問題となります。
補聴器の設定不良と調整
しかし、日本では実耳測定/REMの導入が遅れているため、調整にかかる時間が多くなります。これは、ユーザーの「裸耳利得」を測定していないために起こります。
実耳測定を行わないで初期設定をする場合は、「平均の裸耳利得」を用いて目標利得を算出するため、必ず誤差が生じます。
その誤差を修正するには、複数回の効果測定で周波数ごとの効果を測り調整する必要があるため、その分時間がかかります。
自分の裸耳利得データによる初期設定
実耳測定/REMによる補聴器設定では、ユーザーの裸耳利得データを測定し処方式に組み込むため目標利得を正確に算出できます。
そのため、前述の効果測定による調整はほとんど必要なく、確認のための効果測定をするくらいで済みます。
あとは、聴覚の慣れが進めば調整は完了します。
適正な調整が聞こえを良くする
補聴器は周波数ごとの正確な調整が聞こえを左右します。利得(音の増幅度)に過不足があると「聞こえているけど聞こえにくい」補聴器になります。そのような補聴器ではいくら時間をかけても聞こえは良くなりません。補聴器の調整は実耳測定をおすすめする理由がここにあります。
相手の話し方【音声障害】
しっかりと調整がなされた補聴器でも聞き取りにくいことはたくさんあります。
周囲がうるさ過ぎたり、相手が離れていたり、自分の方を向いていないで話されたりと、環境次第では補聴器をしていても聞き取りにくいことはあります。
一方で、聞き取りの環境が良いにもかかわらず特定の人が決まって聞き取りにくい場合もあります。
加齢性音声障害
加齢性難聴が聞こえの低下であるのに対して、加齢性音声障害は自分の声の老化現象です。声が小さくなったり、かすれたりして、相手が聞き取りにくくなります。65歳以上の高齢者の20%前後が何らかの障害を経験しているそうです。
このような音声障害は軽度であれば訓練によって改善されることもあります。例えば合唱などが有効な訓練と言えます。
高齢になると声を出す機会も少なくなりがちなので、意識して大きな声を出すのも良いかもしれません。
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ホームページ
「人生100年時代」を生き抜くために
かすれ声を放置すると命にかかわる!?
高齢者のコミュニティ
加齢性難聴と加齢性音声障害は特に高齢者に多いので、同じコミュニティに属しているケースがほとんどです。聞こえにくさを感じたら補聴器を検討し、相手が聞こえにくそうにしていたら自分の発声を気にしてみると良いでしょう。
難聴者のつらいところは、補聴器を装用している負い目みたいなものを感じてしまい、聞こえにくい原因が本当は相手の話し方だったとしても、それを指摘できないところもあると思います。
まずは、補聴器を実耳測定による調整で正確に設定し、自分の聞こえに自信を持つことが良いでしょう。