補聴器調整の重要性とお客様の評価

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目標利得と実耳測定の重要性

 補聴器の調整は、聴力に対して周波数ごとにバランス良く設定されていることが重要です。周波数ごとの増幅度合いを「利得(ゲイン)」と言いますが、聴力に対して目標とする利得のことを「目標利得(ターゲットゲイン)」と言います。

 この目標利得は、聴力が同じでも、選択された耳栓の種類やシェルの形状、ユーザーの外耳道の環境によって異なってきます。特に外耳道の環境は人それぞれで、音が鼓膜に伝わるまでの共鳴度合いは人によって異なり、ユーザー固有の外耳道共鳴がそれぞれあります。

 

 それを「裸耳利得」と言いますが、この裸耳利得を測定するには「実耳測定/REM(じつじそくてい/レム)」を行う必要があります。実耳測定を行わない場合は、平均値によって目標利得を算出するため初期設定から誤差が生じることとなり、その結果、補聴器の調整が難しくなります。

 

比較してみましょう

 実際に使用されているお客様のデータを参考に、①実耳測定を行わないで設定された補聴器、②実耳測定で設定された補聴器(イヤモールド)、③実耳測定で設定された補聴器(既製のゴム耳栓)の利得調整画面をそれぞれ比較してみましょう。

お客様の補足情報

ベースとなる聴力データ(オージオグラム)は以下の通りです。

 

 

 ①の実耳測定なしの設定は、平均の裸耳利得データを基準にしているため、お客様は実際に使用はしていません。

一方で、②と③は同じ機種を2セットお持ちで、耳栓がオーダーメイドのイヤモールドと既製のゴム耳栓をそれぞれTPOに応じて使用されています。

 

 

 

お客様の評価

 聞こえ方は②のイヤモールドの方が良く、病院など聞き逃したくない内容が想定される場面では主に②を使用し、装用感(快適性)を重視したい場合には③の既製のゴム耳栓の方を使用しているとのことでした。

 

 実耳測定導入前の従来の効果測定(装用閾値測定)でも一定の評価をいただいておりましたが、実耳測定による調整では、言葉のハッキリさがさらに増し、「聞こえ満足度」が向上したと高評価をいただいております。

 

裸耳利得データ平均値とユーザー値の誤差

 利得調整画面を見てわかるように、ユーザーの裸耳利得データを基準にせず目標利得を算出すると多くの周波数帯で誤差が生じます。

実耳測定器がない場合の調整の問題点

 

 実耳測定器がない場合は、これらの誤差をいろいろな測定で修正していくわけですが、その判断基準がユーザーの反応や応答をもとに行われるため、主観的な要素が入り込みやすく、正確な調整が難しいという問題があります。

 

 こういった問題を解決するためには、繰り返し測定を行い、平均値をとっていくしかありません。しかし、実際に行うとするとそれなりの時間と労力が必要になるため、ユーザーにとってとても負担が大きくなります。

結果として、調整を途中でやめてしまうケースが出てきて、満足度の低い補聴器が増えてしまいます。

 

実耳測定の利点

 実耳測定での調整なら、満足度の高い補聴器を設定することが可能です。ユーザーの負担は少なく、客観的な評価でユーザーの聴力に合った調整、設定を行うことが可能です。

 

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