Last Updated on 2020年12月22日 by 補聴器専門店ミラックス
補聴器装用のポイント
脳の判断
脳は、目で見たもの、耳で聞いたものを今までの経験と照らし合わせて答えを出します。ですから、今まで見たことないものは、正しく認識することはできません。
戦時中、捕虜にゴボウが入った料理を与えたところ、捕虜は木の根っこを与えられたと思い、これは虐待だ、となった話があります。ゴボウを知っていれば、「きんぴら根っこなんて食べられるか!」とはならないでしょう。同様に、未開の地の住人がはじめて銃声を聞いたとき、雷が落ちたと考えるのは当然のように思えます。このように、人は知らない場合、似たようなものを探してきて当てはめようとするのです。
そして、厄介なのは、知っていても間違えることがあるという点です。例えば、パリでテロが起こった時、生存者の多くが銃声を花火だと思ったと証言しています。破裂音を日常で聞くとしたら、銃声よりも花火の方が可能性が高いと考えたわけです。まさか街中で銃声を聞くとは思っていないので、似た音である花火だと考えたのです。逆にこれが戦場であれば、ほとんどの人が銃声だと認識することでしょう。
つまり「脳」は、おかれた環境によって状況を想定し、そのうえで判断しているのです。
補聴器装用のポイント
では、難聴者がはじめて補聴器を装用した場合はどうでしょうか。
難聴の状態は、聞こえていない音がある状態といってよいでしょう。実際に存在している音にもかかわらず、難聴者にとっては存在していない音ということになります。その状態で補聴器を聴力に対して100%合わせると、本人にとっては存在していなかった音がたくさん聞こえてくるので、とてもうるさく感じます。想定外の音がすべて雑音として脳に押し寄せてくるのです。ですから、補聴器をはじめて装用する場合は、目標の音量よりも弱く設定し、雑音がある状態に少しづつ慣らしていく必要があるのです。そして、できるだけ長時間装用することで脳がさまざまな音を許容し、聞こえの改善につながっていくのです。つまり、脳に雑音の再学習をさせるということです。小さめの音からスタートし、何回かに分けて調整していくと体への負担が少なくて済みます。
「調整はこまめに、装用はできるだけ長く」が補聴器装用のポイントです。
ちなみに健聴者の場合は日常的にすべての音が聞こえているので、それらのうるさい雑音を我慢して聞いているのかと言えばそんなことはありません。健聴者の脳は自分に必要のない音、つまり雑音は、聞こえているからこそ、意識の外に置くことができるのです。大前提として、たとえ必要のない雑音だったとしても、認識できていないと、そもそも無視するという判断ができないのです。
これを「カクテルパーティー効果」(選択的聴取)といいます。カクテルパーティー効果とは、たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味のある会話や固有名詞などを自然と聞き取ることができるという現象です。人は音を処理して必要な情報だけを再構築して意識の上にあげていると考えられているのです。
補聴器の装用では、左右でバランス良く聞き取ることによってはじめてカクテルパーティー効果を得ることができます。左右で同じくらい聴力低下がある場合は両耳装用がおすすめです。