はじめて補聴器を装用すると、周りの音が今までよりもハッキリと聞こえてきます。そしてその一方で、大多数の方が「自分の声が変な風に聞こえる」「こもった感じで聞こえる」「反響した感じで聞こえる」「自分の声じゃないみたい」といった感想を述べられます。
これらの違和感はなぜ起こるのでしょうか。
自声への違和感
自分の声への違和感は装用初日が一番強く感じられ、日を追うごとに和らいでいきます。違和感の原因は、補聴器の音質の問題、耳の穴を塞ぐことによって起こるもの、そして自分の声の大きさが今までよりも大きく、または小さく聞こえるためです。
補聴器の音質
デジタル補聴器は、さまざまな処方式を用いて計算し、周波数ごとの増幅割合、利得を決定しています。その中には、※外耳道共鳴分の利得を補った値も設定しているのですが、あくまで平均なので誤差が生じてしまいます。
※外耳道共鳴・・・外耳道にはその共鳴効果により2~3kHz付近の音圧を15dB程強めるという作用(裸耳利得)があると言われています。補聴器で耳の穴を塞ぐと共鳴しなくなるのでその分を補う必要が出てきます。
外耳道閉鎖効果
補聴器をしていない状態では、外耳道(耳の穴の入り口から鼓膜まで)内で発生した音は外に出るのでこもり感などはありません。しかし、補聴器を装用すると外耳道内に発生した音(振動)は、外に出ることなく外耳道内へ向かいますのでこもり感が発生してしまいます。
自分の声や食べ物を嚙んだ時の音は、骨伝導で伝わり外耳道を振動させ、低音域の音が発生します。通常では外耳道から外へ出ていきますが、耳あな型補聴器や耳栓で穴を塞ぐと、この低域の音が外に出ず鼓膜に伝わるため低域のみ大きく感じてしまいます。
この現象は、耳の穴を塞げば必ず起こりますので、指などで耳の穴を塞いでしゃべってみると自分の声がこもって聞こえるのがわかると思います。
補聴器の耳栓の選択によってこもり感を軽減することができます。また、オーダーメイド耳あな型でもベントという空気穴を開けることで同様な効果を出すことができます。ただし、その場合は、低域が抜ける仕様となっているので低域の増幅が必要な聴力には向きません。
声の大きさ
デジタル補聴器は、入力音圧によって増幅する割合を変え聞こえをサポートしています。
小さい音(50dB)、普通の音(65dB)、大きい音(80dB)の入力音圧に対して小さな音は大きく、大きな音は小さく増幅し聞こえ方を調整しています。
自分の声というのは、耳から近い口から発生していますので、補聴器は大きな音として分析し処理します。
軽度から中等度難聴の場合はその利得が大きすぎる時に違和感が出てきます。逆に高度から重度難聴の場合は、自分の声が小さく聞こえることで違和感を感じることがあるので、その場合は、利得が小さいということになります。
はじめての補聴器装用では、今まで小さく聞こえていた自分の声が大きく聞こえてくることによって出てくる違和感ですので、装用を続けているうちに自然と慣れてくることが多いです。
まとめ
補聴器装用時における自分の声の違和感の原因は1つではありません。また、ユーザーの聴力や補聴器経験の有無、補聴器のタイプなどでも違和感の強さは変わってきます。
はじめての補聴器装用では特に違和感が出やすいので専門家に相談し、最善の対策を施してもらいましょう。