「聞こえた?」
「うん。」
「・・・・・・・・」
「・・・・聞こえてない!!!!」
ご家族やご友人に難聴気味の方がいる場合、少なからずこんなやり取りをしたことがあるのではないでしょうか。
「聞こえる」ということは「音を認識する」ということ。そして「音を認識する」ということは「脳に信号が送られた」ということです。逆に言えば、送られた信号が不十分だとしても脳にとっては、送られた信号がすべてだということです。
あなたにとって、会話が「聞こえた」は何を意味しますか?
A:会話の内容を理解した。
B:内容はわからないが自分に対しての会話だと認識した。
答えはどちらの場合もあるはずです。
しかし、同じ「聞こえた」ですが意味するところは全く異なります。
Aは内容を理解して会話が成立しているのに対して、Bは音を認識したに過ぎず、会話の内容は理解していないので会話は成立していません。
聞こえの誤解
健聴者が難聴者に対して確認の意味で「聞こえた?」と問う場合はどうでしょう。健聴者は会話の内容を理解したのかを問いかけているのに対して、難聴者は内容はわからないが自分に対して問いかけをされていることは認識しています。ですから難聴者は「聞こえた?」に対して、「聞こえない」とはまず返しません。なぜなら内容はわからないけど「聞こえてはいる」からです。
しかしそこで健聴者は「聞こえたって言ったのに聞こえてない!」と憤ってしまうのです。そんなやり取りを重ねていくと難聴者は次第に自信をなくしていきます。何でもそうですが、何度となく否定されるのは精神的に結構きついものがあります。
どちらが悪いとかではなく、お互い「聞こえる」の意味が違うことによる誤解です。
毎日、繰り返しそのようなやり取りがあるとお互い疲れてしまいますし、いつの間にか会話を諦めてしまうようになりかねません。
もし、会話の内容が理解できているか確認する場合は、その話題に対して意見などを聞いてみてその反応を見てみるのも一つの手だと思います。
難聴の場合、聞き取りにくい周波数帯は曖昧な情報としてしか伝わりません。その結果、音は聞こえているけれども何を言っているのかがわからないといったことが起きてしまいます。
思いやり
少しの配慮がお互いにとっての利益となります。難聴の方は「えっ?」と聞き返すのではなく「聞こえたけど、何を言っているのかはわからなかったから、もう一回言ってくれませんか」と相手に伝える方がスマートです。
健聴の方はできるだけ顔の正面でゆっくりはっきり伝えることを心がけるといいと思います。たとえ補聴器を装用していたとしても、横からよりも正面から話しかけられたほうが聞きやすいです。いきなり話しかけるのではなく相手がこちらに気が付いたら話し始めるとほとんどの問題は解決するはずです。
補聴器という選択肢
補聴器はスムーズなコミュニケーションに役立ちます。そしてそこに、少しの配慮が加わるだけで補聴器の効果は飛躍的に高まります。円滑な意思の疎通はあなたの生活のみならず、あなたとかかわるご家族やご友人の生活も豊かにします。
補聴器は、聞こえにくくなった周波数帯を増幅し会話を聞こえやすくしてくれるアイテムです。耳掛け型や耳あな型、充電式など多彩なラインナップであなたの聞こえをサポートしてくれます。
聞こえに不安を感じたらまずは専門家に相談してみましょう。