ミラックスでは実耳測定(じつじそくてい)を導入しております。
REM(Real Ear Measurement)レムと呼ばれている補聴効果測定方法で、測定機器はシバントス社製「Unity 3」を採用しています。
はじめに
外耳道(耳のあな)の形状は人それぞれ異なります。
形状が違えば、外耳道で起こる「共鳴」も人それぞれで異なります。
これを「外耳道共鳴」と言い、その値は「裸耳利得」で表されます。
自分の耳のサイズで聞こえを合わせる【実耳測定】
日本では、補聴器の音(目標利得)を決める際に、ユーザーの聴力データと平均的な外耳道の大きさ(裸耳利得)を用いて初期設定をされることが多いです。
そこにはユーザーの外耳道データは反映されていません。
言ってみれば「–借り物の裸耳利得–」を基準に補聴器の目標利得(ターゲットゲイン)を算出しています。
それゆえ、補聴器から出力された音が鼓膜面にどのくらい届いているのかを正確に知ることはフィッティング画面上では知ることができません。それが誤差となり調整を難しくします。
そこで【実耳測定】では、ユーザーの裸耳利得を測定することで、より正確な目標利得を算出することが可能となります。
つまり、補聴器の初期設定の音量がより正確になるというメリットがあります。
実耳測定の手順
ユーザーはスピーカーから出力される測定音を聞くだけで応答する必要はありません。
- プローブチューブを鼓膜面より6mm以内に配置します
- 実耳裸耳利得を測定します※1
- プローブチューブを挿入したまま補聴器を装用します
- 実耳挿入利得を測定します※2(65dB入力、55dB入力、80dB入力)
- 実耳挿入利得を確認しながら補聴器の調整を行います
耳のあなに挿入するプローブチューブは、柔らかいシリコン素材で出来ているので少しくすぐったいですが痛みはありません。
※1 実耳裸耳利得:補聴器を装用していない状態の外耳道共鳴を測定します。REUG(Real Ear Unaided Gain)
一般的に2,800Hzで約20dBの増幅があります。
測定された裸耳利得(ユーザーの外耳道データ)を基準として目標利得(ターゲットゲイン)を求めていきます。
※2 実耳挿入利得:補聴器を装用して鼓膜面での音圧を測定し、実耳補聴利得REAG(Real Ear Aided Gain)を求めます。
そして、はじめに測定された裸耳利得と実耳補聴利得の差が実耳挿入利得REIG(Real Ear Insertion Gain)となります。
REMの画面とフィッティング画面を見ながら補聴器の調整を行っていきます。
オートターゲット【早くて正確!】
シグニア補聴器、フォナック補聴器、GNリサウンド補聴器については、Unity3モジュールを使用して目標利得の自動算出を行うことが可能です。
シグニアは「AutoFit」、フォナックは「Target Match2.0」、GNリサウンドは「オートREM」という機能によって手動での調整よりも早く正確に自動で補聴器の設定を行うことが可能です。
連続した必要な全周波数の値が得られるためバランスが良く、聞こえ満足度のさらなる向上が見込めます。
デジタル補聴器の働きと実耳測定
デジタル補聴器の働きにノンリニア増幅というものがあります。これは、異なる入力音に対してそれぞれ増幅度合いを変えるというものです。65dB入力は普通の会話音、50dB入力は小さな入力音、80dBは大きな入力音といった具合です。このノンリニア増幅によって小さい音は聞きやすく、大きな音は抑えめにすることが可能となります。
補聴器の調整では、これら3つの入力音に対しての働きを最適なものにしていきます。通常、装用閾値測定では1つのレベル入力の効果しか測定できないですが、実耳測定ではこれら3つの入力音を測定することが可能なので、より正確な調整が期待できます。
また、装用閾値測定が非連続の周波数帯を測定するのとは異なり、実耳測定では必要な全周波数、連続した周波数の値を得ることができます。
スピーチマッピング・パーセンタイル分析
スピーチマッピングは補聴器のリアルタイムな動作を視覚的に確認、評価できる実耳測定オプションです。
国際音声試験信号(ISTS)という6ヵ国語(日本語は含まれていません)の音声を混ぜて作成された測定音を聞き、音声の強弱、平均を統計的に分析します。
パーセンタイルとは音の成分を小さい方から大きい方に99個並べた時の順番です。
最も小さい音を1、最も大きい音を99とし「小さい音(青色)」は30~64、「平均(真ん中の赤線)」は65、「大きい音(赤色)」は66~99に分け分析し評価します。
※1~30は聴感上聞こえない暗騒音のため表示されません。
視覚的に赤線の平均がユーザーの目標利得(ターゲットゲイン)に近づき、最小可聴閾値(聞こえはじめの値)を下回らないように、また不快閾値(うるさく耐えられない値)を上回らないように確認できるため最終確認にも有効です。
実耳測定のメリットとデメリット
メリット
- 短時間の測定
- ユーザーの応答が必要ない
- シグニア、フォナック、GNリサウンドは、自動算出機能でさらに時間短縮と正確な利得調整が可能
- 連続した必要な全周波数の値を得られる
- 測定音を複数のレベルで行う事が出来る(65dB入力、50dB入力、80dB入力)
- スピーチマッピングによるリアルタイムな補聴器動作の評価が可能
デメリット
- イヤモールドやシェルの形状によっては測定が難しい
- プローブチューブが耳あかで塞がれると大きく影響を受ける
- 導入コストが高額(店舗)
さいごに
日本における補聴器の効果測定は、現状では語音明瞭度測定や装用閾値測定(ファンクショナルゲイン測定)がメジャーですが、そこに実耳測定を組み合わせることで細部まで行き届いた調整を行うことが可能となります。
店舗にとっては導入コストがネックとなりますが、補聴器ユーザーにとってはメリットしかありません。
認定補聴器専門店「ミラックス」では、実耳測定を導入することで“価値ある聞こえを”お客様にご提供いたします。